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壬申戸籍はなぜ閲覧禁止?差別問題の歴史的背景を元教師が解説

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目次

現代における壬申戸籍問題

婚姻届けの提出

閲覧禁止後の不正流出事件

閲覧禁止から57年が経った現在でも、壬申戸籍は厳重に封印されたままです。

しかし、2019年にはインターネットオークションに「明治戸籍」として出品される事件が発生しました。

90件以上の入札があり、13万3000円で落札されました。

しかし、ヤフーが規約違反と判断して取引を取り消しました。
間一髪の水際防御だったわけです。

その後、法務局が出品者から無償で回収しています。

個人情報保護の原点として

壬申戸籍の問題は、現代の個人情報保護を考える上でも重要な示唆を与えてくれます。

かつて日本では、戸籍は「公証機能」を優先して原則公開とされていました。

しかし、差別や人権侵害に利用される危険性が明らかになり、2008年(平成20年)の法改正で請求権者が「配偶者・直系尊属・直系卑属」に限定されたのです。

「善意で作られた制度が、悪意ある利用によって人権侵害の道具になる」という歴史の教訓が、ここにあります。

朝ドラが描く明治時代の個人情報意識

朝ドラ「ばけばけ」第41話では、主人公がヘブンの個人情報を軽々しく漏らしている場面が描かれています。

明治時代には「個人情報」という概念がほとんどなく、善意で他人の情報を共有することが当たり前だったのです。

壬申戸籍の差別記載問題も、この時代の「情報への無自覚さ」が背景にあったと整理できます。

近代国家を急いで作ろうとした明治政府が、人権への配慮を欠いた結果が、96年間の悲劇を生んだわけです。

👉関連記事:トキがHeavenの個人情報を漏らした理由|ばけばけ41話

家系図作成と壬申戸籍

役場 待合室

取得可能な最古の戸籍は明治19年式

家系図を作ろうとする方が必ず直面するのが、壬申戸籍の閲覧禁止という壁です。

しかし、現在でも取得可能な最古の戸籍は「明治19年式戸籍」(1886年式)です。

明治19年戸籍からでも、江戸時代生まれのご先祖の名前や本籍地を確認できるため、ルーツ探しの手がかりは十分に得られます。

壬申戸籍にこだわるよりも、得られる情報から江戸時代へと辿る方が現実的です。

壬申戸籍は公開されるのか

法務省は壬申戸籍を「行政文書に該当しない」として非公開の立場を取っています。

過去の情報公開請求も裁判所により却下されています。

人権保護の観点から、今後も封印が続くと考えられます。

元教師としての立場からも、壬申戸籍は「見られない方が良いもの」と位置づけられます。

【表:取得可能な戸籍と遡れる年代】

戸籍の種類編製年取得可否遡れる年代
壬申戸籍1872年❌ 閲覧禁止江戸末期~明治初期
明治19年式戸籍1886年✅ 取得可能江戸末期~明治初期
明治31年式戸籍1898年✅ 取得可能明治初期~中期
大正4年式戸籍1915年✅ 取得可能明治後期~大正

👉関連記事:徳川光圀の水戸学:「勝ち負けでなく、何が正しいかで歴史を読み解く」

Q&Aで振り返る壬申戸籍と差別問題

Q1. 壬申戸籍は今後公開される可能性はありますか?

現時点では公開の見込みはほとんどありません。

法務省は壬申戸籍を「行政文書に該当しない」として非公開の立場を取っており、過去の情報公開請求も裁判所により却下されています。

人権保護の観点から、今後も封印が続くと考えられます。

Q2. なぜ明治政府は差別解消に本気で取り組まなかったのですか?

明治政府にとって解放令は、欧米諸国からの圧力に応えるための形式的措置という側面が強かったと整理できます。

四民平等を掲げながらも、実質的な解放政策(教育・住居・職業支援など)はほとんど行われませんでした。

政府の優先事項は「近代国家の体裁を整えること」であり、人権意識の啓発は二の次だったのです。

Q3. 家系図を作りたいのですが、壬申戸籍が見られないとどこまで遡れますか?

明治19年式戸籍までは取得可能です。

明治19年戸籍からでも、江戸時代生まれのご先祖の名前や本籍地を確認できるため、ルーツ探しの手がかりは十分に得られます。

壬申戸籍にこだわるよりも、得られる情報から江戸時代へと辿る方が現実的です。

Q4. 壬申戸籍の問題は現代に何を教えてくれますか?

「善意で作られた制度が、悪意ある利用によって人権侵害の道具になる」という歴史の教訓を与えてくれます。

明治政府は近代化のために戸籍制度を整備しましたが、差別意識への配慮を欠いた結果、96年間にわたって差別を固定化してしまいました。

現代の個人情報保護を考える上でも、重要な示唆を与える歴史的事例です。

Q5. 1968年の閲覧禁止措置はなぜ重要なのですか?

部落解放運動による長年の闘争が、ようやく実を結んだ歴史的転換点だったからです。

1968年まで96年間、壬申戸籍は誰でも閲覧できる状態で差別に利用され続けました。

この年の措置によって、ようやく差別利用に歯止めがかかったのです。

Q6. 役場で言う「原戸籍」とは何を指していましたか?

A. なおじは、退職後、5年間教員免許の発行・再交付事務をしていました。

その現場で「はら戸籍を取ってきてください」と伝えることがたびたびありました。

この場合の「はら戸籍」とは、平成6年の戸籍法改正前に使われていた、紙の手書きB4縦書きの旧戸籍を指していました。

現在では戸籍はコンピュータ化されています。電子媒体です。

ですが、現行の戸籍だけでは前歴や親子関係が追えない場合がありました。

その場合は、現行より一つ前の旧様式の戸籍(平成改製原戸籍にあたる内容)を取得してもらう必要があったのです。

平成6年(1994年)の戸籍法改正より前に作られていた手書きの戸籍。
これが役場・役所で言う「はら戸籍」です。

壬申戸籍(改正原戸籍)や、戦前の「家」制度の戸籍を意味するものではありません。

筆者紹介|なおじ

元社会科教師として35年間、小・中学校で教壇に立ってきました。

現在は7つのブログでドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学びについて執筆しています。

歴史ブログでは、教科書に載らない制度の背景や歴史的文脈を丁寧に解説するスタイルを心がけています。

バスケットボール部顧問として15年間、生徒たちと向き合ってきた経験も、人権教育への関心を深めるきっかけとなりました。

キャンピングカーで全国を旅しながら、各地の歴史遺産を訪ね歩いています。

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