現代社会に残る「見えない序列」
江戸時代の身分制度は、単なる過去の出来事ではありません。
現代社会にも、形を変えた「見えない序列」が存在しているからです。
例えば、学歴による社会的評価、正規雇用と非正規雇用の格差、地域による経済格差など、私たちの社会にも実質的な階層構造が存在します。
法律上は「平等」でも、実際には生まれた環境や経済力によって人生の選択肢が大きく異なる――これは江戸時代の「経済力が身分を超える」構造と似ています。
また、差別や偏見も完全にはなくなっていません。
部落差別、外国人差別、ジェンダー差別など、歴史的に形成された意識は、現代でも影を落としています。
江戸時代の身分制度と明治の差別構造を学ぶことは、**現代社会の不平等を見抜く「レンズ」**になるのです。
35年間教師をしてきた私の経験からも、歴史を学ぶ最大の意義は「現代社会をより深く理解すること」にあると考えています。
江戸時代の人々が身分制度という枠の中で、どう生き、どう抵抗し、どう順応したのか――その歴史を知ることで、私たちは現代の課題にもより賢明に向き合えるのではないでしょうか。
Q&Aで振り返る江戸時代の身分制度
Q1: 江戸時代に身分を超えて出世した例はありますか？
はい、あります。豪商が武士身分を買う「株仲間」制度や、優秀な百姓が藩の役人に登用されるケースもありました。ただし、これらは例外的で、大多数の人々は生まれた身分のまま一生を過ごしました。
Q2: 士農工商の「商人が最下位」というのは本当ですか？
儒教思想では「生産しない商人は価値が低い」とされましたが、実際には経済力を持つ商人の社会的影響力は極めて大きかったです。このため、現在の歴史教科書では「士農工商という固定的序列」という記述は減少しています。
Q3: 江戸時代の身分制度と明治以降の差別はどうつながっていますか？
江戸時代の被差別身分は、明治の解放令後も「元穢多」「新平民」として戸籍に記載され続けました。これが就職・結婚差別に利用され、1968年まで続きました。法律で身分を廃止しても、人々の意識や制度の中に差別構造が残ったのです。
筆者紹介｜なおじ
元社会科教師として35年間、小中学校の教壇に立ってきました。
現在は7つのブログでドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学びをテーマに執筆しています。
歴史ブログでは、教科書では語られない「制度の背景」や「歴史的文脈」を丁寧に解説するスタイルを心がけています。
趣味はキャンピングカー旅行と川柳。