こんにちは、なおじです。
「教科書の日本史って、昔は『天皇・将軍の政治の話』ばっかり、戦後は『農民中心』でワンパターン…」そんな風に思ったことありませんか?
実は中世の日本には、政治史にも農民史にも収まらないめちゃくちゃ面白い人たちがいたんです。
今日は、そんな隠れた日本史の主役たちを発見した歴史学者・網野善彦(1928-2004)のお話をしていきましょう。

網野善彦って誰? – 戦前・戦後の歴史観を超えた革命児
山梨から始まった歴史観の革命
網野善彦は山梨県出身の中世史研究者。
東京大学を出た後、渋沢敬三が作った日本常民文化研究所で働いていました。
この人、とにかく型破りだったんです。
1978年に出した『無縁・公界・楽――日本中世の自由と平和』という本が、学術書なのにベストセラーになっちゃった。
歴史の本でベストセラーって、今考えてもすごくないですか?

なぜ注目されたのか
網野さんが画期的だったのは、従来の歴史観の両方を批判したこと:
- 戦前の政治史:天皇・将軍・貴族の話ばかり
- 戦後の民衆史:農民中心で「国民的歴史学」を標榜
そして網野さんは**「どっちも偏ってるよ」**と言ったわけです。
日本史の見方が変わってきた背景
戦前:支配者の歴史
戦前の日本史教育は、完全に政治史中心でした:
- 天皇の治世
- 将軍や大名の政治
- 戦争の歴史
一般民衆?ほぼ無視です。
戦後:農民中心史観の登場
戦後は一転、**「民衆が主役」**の歴史観に:
- マルクス主義史学の影響で階級闘争を重視
- 支配者中心の歴史への反省
- 「国民的歴史学運動」で農民を主役に据える
確かに民衆に注目したのは良かったんですが、今度は「農民ばっかり」になってしまった。
網野史学の第三の道
網野さんは両方の限界を指摘しました:
技一つで 全国どこでも メシが食え
農民でもない、支配者でもない。
でも確実に社会を支えていた人たちがいたじゃないか!
中世日本を支えた多彩な人々

こんなにいた!様々な職業群
網野さんが注目したのは:
🔨 職人:
- 鍛冶師(刀や農具を作る)
- 番匠(大工のこと)
- 鋳物師(銅や鉄の製品を作る)
- 陶工(焼き物を作る)
💰 商人:
- 座商人(組合を作って商売)
- 行商人(全国を回って商売)
- 金融業者(お金を貸す)
🎭 芸能民:
- 猿楽師(能の原型を演じる)
- 白拍子(歌って踊る)
- 琵琶法師(物語を語る)
- 遊女(接客業)
⛩️ 宗教者:
- 遍歴僧(旅する坊さん)
- 山伏(山で修行する)
- 陰陽師(占いや金属探査も)
彼らの生き方が革新的だった理由
これらの人たちの共通点は:
- 農地に縛られない
- 技術で生計を立てる
- 全国を移動できる
- 実力主義の世界
現代のフリーランスやノマドワーカーの原型みたいなものですね。
「無縁・公界・楽」- 自由な空間の発見

網野史学の核心概念
網野さんが発見した最も重要な概念が「無縁・公界・楽」:
無縁: 既存の人間関係から自由になった状態
公界: 特定の権力に支配されない中立地帯
楽: 税金や労役から解放された自由な領域
実力主義が機能した世界
これらの空間では:
- 身分や家柄は関係なし
- 技術があれば認められる
- 才能で評価される「実力主義」
現代の私たちが理想とする社会が、実は中世にすでに存在していたなんて、ちょっと驚きじゃないですか?
あの『もののけ姫』も網野史観!

宮崎駿監督が惚れ込んだ歴史観
宮崎駿監督は『もののけ姫』制作で、網野史観に大きく影響を受けたことを公言しています。
たたら場で働く人々、身分にとらわれない自由な生き方...まさに網野さんが描いた中世世界そのもの。
網野さん自身も映画を見て**「よく勉強して作られている」**と評価し、後に宮崎監督と対談も実現しています。
賛否両論 – でもそれが学問の証拠
批判もある、それが当然
網野史学には批判もあります:
でも議論が起こるということは、それだけインパクトがあった証拠。
学問は常識に挑戦してこそ発展するものです。
重要なのは多様な視点
網野さん自身も、自分の説が完璧だとは思っていませんでした。
大切なのは一つの見方に縛られないこと。
いろんな角度から歴史を見ることで、より豊かな理解が生まれるんです。
現代に生きる私たちへのメッセージ
「多様性」「働き方の自由」を考える
網野さんが描いた中世日本は、現代の私たちが追求している価値観と重なります:
- 技術重視: スキルがあれば評価される
- 移動の自由: 住む場所を選べる
- 多様な生き方: いろんな職業が共存
- 実力主義: 出身より能力が大事
三つの歴史観を理解する
現代の私たちは、三つの歴史観を理解できる立場にいます:
- 政治史(戦前):支配者中心の見方
- 農民史(戦後):民衆中心だが農業偏重
- 多様民衆史(網野):職人・商人・芸能民にも注目
どれも一面の真実を持っているんです。
まとめ – 歴史って実はめちゃくちゃ面白い
網野善彦の「職人・商人・芸能民に注目する社会史」は、私たちに大切なことを教えてくれます:
✨ 日本社会は昔から多様だった
✨ 一つの歴史観だけでは不十分
✨ 庶民にもドラマがある
✨ 過去から学べることがたくさんある
歴史って、ただの暗記科目じゃないんです。
過去を知ることで現在をもっと深く理解でき、未来を考える材料にもなる。
網野さんが見つけた「もう一つの日本」を知ることで、きっと日本史がもっと身近で面白いものに感じられるはずです。
定説を ひっくり返して 茶をすする
なおじも一生に一度くらいは、歴史的な発見をしてみたいものです。
そして、勝利のコーヒーをすする…、夢ですねぇー。
参考文献
- 『無縁・公界・楽――日本中世の自由と平和』平凡社
- 『日本中世の民衆像――平民と職人』岩波新書
- 『日本の歴史をよみなおす』筑摩書房
